女性アスリートの三主徴(さんしゅちょう)とは
女性アスリートの三主徴(the female athlete triad)というものが
アメリカのスポーツ医学会より提言されたものとしてあります。
ハードなトレーニングを行う女性スポーツ選手には健康上のリスクがあり、身体に現れる3つの徴候があるというものです。
この徴候が以下の3つです。
①無月経(機能性視床下部性無月経)
②利用可能なエネルギー不足(摂食障害)
③骨量減少(骨粗しょう症)
②の利用可能なエネルギー不足は、たとえ食事を取っていてもハードなトレーニングを行っていると、それに見合わない食事であれば結果的に身体の中ではエネルギー不足、栄養不足の状態になっているということです。
以前は②の利用可能なエネルギー不足という名称を拒食などの「摂食障害」とされていましたが、摂食障害だけでなく、たとえ食事を取っていてもトレーニングに見合った食事でないと結果的にエネルギー不足の状態になることから2007年に利用可能なエネルギー不足という名称に変更されました。
ハードなトレーニングを行いながら、体調もしっかりと管理されてる場合はいいですが、それがうまくいかなくなった時に身体の中で異常が起こり、進行すると女性のスポーツ選手において上記のような3つの症状として体に現れます。
スポーツをすることでこういったこともありますので、今回は女性アスリートの三主徴について考えてみようと思います。
骨について起こっていること
骨は日々
破骨(はこつ)細胞という細胞によって古い骨を壊し
骨芽(こつが)細胞という細胞によって新たに骨を形成します。
骨もターンオーバーといって、新陳代謝のサイクルが日々身体の中で起こっています。
このバランスがうまく出来上がり、いい体の状態、骨の状態も保たれています。
精神的なことも合わせて、身体の状態が崩れ、ホルモンのバランスなど崩してしまうと、このバランス状態が崩れていきます。
骨を作る骨芽(こつが)細胞の力が落ちてしまうと、破骨(はこつ)細胞によって壊された骨を修復しにくい状態となり、骨自体が弱くなっていき、疲労(ひろう)骨折や骨折を含めてけがのリスクが増えていきます。
女性ホルモンが減少すると上記のように骨を作る骨芽(こつが)細胞の働きが弱くなり疲労(ひろう)骨折などケガのリスクが高くなります。
女性アスリートの三主徴とケガの関連性
女性アスリートの三主徴が起こってくると、骨自体が弱くなるので、骨折や疲労(ひろう)骨折など骨に問題を起こしやすくなるということは分かりそうです。
さらに、骨折や疲労(ひろう)骨折に加えて、腱(けん)損傷やねんざ、脱臼と色々なケガが多くなるという結果にもなっています。
身体の状態が悪くなると様々な身体のトラブルも起こしやすくなるということでもあります。
高校生の3割、高卒以上の5割が疲労(ひろう)骨折を経験
高校生の34%、高卒以上の57%が疲労(ひろう)骨折をしたことがあるとの結果が全国都道府県対抗女子駅伝の40回大会出場の全チームからの調査報告からでています。
こちらの数値はやはり異常と考えるべき数値です。
なぜ女性アスリートの三主徴が起こるのか
1.身体に合わない過剰なトレーニング
試合に勝ちたい、タイムを良くしたいと思う気持ちや、試合に出られない選手は練習するしかないとの強い思いで練習量が多くなってしまうこともあります。
トレーニングはチームで管理されてることもあり、スポーツでは結果も必要になるので練習量を落とすことも難しい部分でもありますが、身体に合わないトレーニングのやりすぎは身体を痛めてしまいます。
気持ちと結果がうまくついてくる場合はいいですが、うまくいかなかったりと練習をやりすぎたりと精神的にも疲れてしてしまうこともあります。
下にあるイラストのような悪いスパイラルにおちいってしまうこともあります。
2.食事
摂食障害、トレーニング量に見合わない食事。
摂食障害が起こってしまうケースもありますが、たとえ食事を取っていてもハードなトレーニングに見合わない食事では結果的に体の中では栄養不足となってしまいます。
思春期の女性のスポーツ選手はスタイルも気になり「もっとやせたいと思う」という報告もあります。
ハードなトレーニングをするのであれば身体のためにもしっかりと栄養は取ってもらいたいと思います。
3.その他
精神的なこと、睡眠も関わってきます。
女性アスリートの三主徴を防ぐには?
トレーニングに休息の重要性と食事の管理をしっかりと行うということが基本になります。
ただ、スポーツでは結果を出さないといけないという側面もあり、結果的に身体に負担をかけて練習を頑張らないといけないということがでてきます。
そうなるとトレーニングをしている本人と共にご家族の方や指導者を含めて周りが本人の異常にいち早く気づいてあげることが重要になってもきます。
そのためにも選手、ご家族の方、指導者の方はこういった知識は知ってもらう必要もあります。
女性アスリートの三主徴を解決するために
女子選手の三徴候が起こった状態でトレーニングしたとしても、良い結果を出すことは出来ません。
そして、当然身体によくはありません。
まずは婦人科といった病院で検査を含めて、他に何か異常がないか検査してもらったり、相談することも必要です。
ケガをすると整形外科というイメージもありますが、産婦人科医に相談することも大切です。
治療院で身体の調整をしてもらうことも
身体をご自身やチーム内で管理できるならいいと思いますが、難しいこともあると思います。
そういった時は身体の調整をしっかりとしてもらえる治療院で身体の状態を良くしてもらうことがいいと思います。
現在は身体に無理がかかり、うまくいかない身体の状態で頑張っている状態です。
それではなかなか結果も出ません。
ケガが増えたり、身体に良くもありません。
身体の状態が良くなればパフォーマンスは上がります。
身体が良い状態で練習や試合ができると今まで以上のタイムが出せたり、試合に出られないと困っている選手もパフォーマンスが上がり試合に出ることができるかもしれません。
たとえ試合に出られなかったとしても健康的な身体でトレーニングをすることは出来ます。
スポーツ選手は日ごろから身体の負担も大きいので定期的に身体を調整してもらうことも必要です。
健全なスポーツ活動を。
女性アスリートの三主徴として女性は身体に現れます。
女性のスポーツ選手やそれに携わる指導者、ご家族の方は選手の身体のためにもこういったことは知っていて欲しいと思います。
そして、女性だけでなく男性も身体に現れないだけで同じようなことはいえると思います。
スポーツでは結果を求められたり、競争があるので言葉で言うほど簡単でもありませんが、スポーツは身体にとって健全な状態で行って欲しいと願います。
参考文献:選手と指導者のためのサッカー医学 Chapter22女子サッカー選手の健康管理
ランニング学研究(2023)34巻(1・2)79 ~ 84